広く知られるようになった「事故物件」という言葉。もしも自分の所有している不動産が事故物件になってしまった場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。本記事では、不動産の売主がおさえておくべき事故物件の告知義務と、事故物件の売却方法について詳しく解説します。
●事故物件とは?
事故物件とは「心理的瑕疵」のある物件のことで、「瑕疵」とは本来あるべき品質や状態が契約内容に適合していないことを表します。不動産業界での「瑕疵」は、一般的に物件購入後に見つかる欠陥や傷を指します。
心理的瑕疵のある物件とは、買主が心理的に嫌悪感や抵抗感を抱いてしまい、本来であれば担保されるべき住み心地の良さが阻害される要素を含む物件です。平たく言えば「その事実を知っていれば、契約には至らなかった」物件になります。
つまり、事故物件とは人命にかかわる事件や事故の現場となった不動産のこと。殺人や自殺、事故死、孤独死、火災による死亡や不審死などが起きた物件が該当します。
なお、老衰や病死などの自然死、転落・転倒事故、食事中の誤嚥など不慮の事故死が起きた物件は、事故物件には当てはまりません。ただし、自然死の場合でも、長期間放置されて特殊清掃が必要になった場合は、事故物件として扱われることがあります。
事故物件の告知義務について
不動産にかかわる契約をする場合、宅地建物取引業法により、「重要事項説明」が義務付けられています。相手の判断に重要な影響を及ぼすと考えられる事実については、必ず告知が必要です。
告知義務は事故物件(心理的瑕疵のある物件)だけでなく、反社会的勢力の事務所や風俗店、墓地などの嫌悪施設が近くにある物件(環境的瑕疵のある物件)などにも発生します。もちろん、雨漏りやシロアリの被害、地盤沈下など、欠陥がある物件(物理的瑕疵のある物件)や、法令上の制限などにより、自由な利用が阻害される物件(法律的瑕疵のある物件)にも、告知義務があるため注意しましょう。
告知義務を怠った場合、買主から損害賠償請求をされたり、詐欺罪に問われたりするおそれもあるため、売主が把握している物件の瑕疵はすべて買主に伝えなければなりません。
事故物件を売却するにはどうしたら良い?
では、事故物件を手放すためにはどのようにしたら良いのでしょうか。事故物件の売主が検討すべき代表的な方法を4つ紹介します。
更地にしてから売却する
心理的瑕疵の原因となる事件・事故は、多くの場合、建物の中で起こっています。そのため、現場となった建物を取り壊し、更地にすることでいくらか嫌悪感を払拭できます。建物付きで売るよりも、需要が見込める可能性も。ただし、売却時の告知義務は果たさなければなりません。
駐車場やコインランドリーなどに転用する
居住用物件として売却するのではなく、駐車場やコインランドリーなど、投資用物件として運用するのもひとつの手です。利益がしっかり出ていれば、買い手もつきやすくなります。ただし、コインパーキングやコインランドリーにする場合は、まとまった初期費用が必要になります。事故物件を転用する場合は、その土地の市場調査が欠かせません。
賃貸物件として売却する
買主の居住用としては買い手がつきづらい事故物件ですが、立地によっては賃貸物件としての需要がある場合も。まずは賃貸として運用して実績を作り、投資用不動産としての評価を高めてから売却を検討しましょう。ただし、居住人(賃貸で借りる人)にも告知義務は発生するため、その点には注意が必要です。
不動産会社に買い取ってもらう
売主の心理的な面から、とにかく早く手放したいケースでは、不動産会社に買い取ってもらうことも検討しましょう。事故物件などの「訳アリ物件」を専門で取り扱っている不動産会社もあります。査定価格よりもかなり低い額になってしまいますが、とにかく早く引き払いたい場合には有効です。
事故物件も売却は可能! ただし告知義務に注意!
心理的な嫌悪感を抱かせる事件や事故の現場となった事故物件は、売却自体はできるものの売買契約前に「重要事項説明」として告知義務が発生する点には注意が必要です。とにかく早く事故物件を手放したい場合は、事故物件を専門で扱う不動産業者に買い取ってもらうことも検討してみましょう。