マンションや住宅など不動産の売却を行う際「できることなら悪い情報は伏せておきたい……」と考えたくなることもあるでしょう。
確かに、マイナスな情報は購入希望者の意欲をそいでしまうかもしれません。しかし、そのような物件のマイナスポイントを申告しないまま売却を行ってしまうと、大きなトラブルに発展してしまう恐れがあります。
そこで今回は、不動産売却をするなら知っておきたい「契約不適合責任」について解説します。
契約不適合責任とは?
契約不適合責任とは、売買している土地や建物などに不具合(瑕疵)が見つかった場合に、売主が責任を負う制度です。以前は「瑕疵担保責任」という名称でしたが、2020年4月の民法改正によって契約不適合責任となり、内容も一部変更されました。
契約不適合責任では、「瑕疵が売買契約書に書かれていたか」が重要なポイントになります。そのため、買主が物件に不具合があることを知っていても、契約書に書かれていなければ契約不適合責任に問われる恐れがある点に注意が必要です。
契約不適合責任の時効は「引き渡しから10年以内、買主が事実を知ってから5年以内」であり、行使には「買主が瑕疵を知ってから一年以内に通知が必要」とされています。
瑕疵にあたる4つのケース
「土地や建物の瑕疵」は大きく4つに分類されます。それぞれ、どのようなものがあるのかチェックしておきましょう。
物理的瑕疵
土地や建物が追っている物理的な欠陥を指します。土地に関しては土壌汚染や地中障害物、建物に関しては雨漏りやシロアリ被害による腐食などが挙げられます。
心理的瑕疵
心理的瑕疵がある物件とは、いわゆる事故物件と呼ばれるものです。過去に火災や事件・事故など、不安感や嫌悪感を抱かせる出来事があった場合は心理的瑕疵に該当します。
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、主に周辺環境の問題を指します。ゴミ処理場や火葬場が近くにある、近隣から騒音、異臭、振動が伝わるなどが挙げられます。
法律的瑕疵
建築基準法や都市計画法など法律に触れるものを指します。建築規制にも及ぶため、再建築が不可の場合なども法律的瑕疵に該当する場合があります。
契約不適合責任のリスクを減らすためには
売主として契約不適合責任に問われるリスクを減らすためには、どのようなことを行うのが良いのでしょうか。以下の3つのポイントをチェックしておきましょう。
売買契約書の見直し
契約不適合責任に問われるかどうかは売買契約書の内容が焦点となります。そのため、まずは売買契約書を見直して、瑕疵に関するトラブルがカバーできているかをチェックしましょう。「特約・容認事項に物件の状態や特徴をしっかりと記入する」「契約不適合責任の期間を具体的に制限する」「売買契約書の内容を専門家に相談する」などを行っておくと安心です。
事前にインスペクションを行う
インスペクションとは売買契約前に実施する住宅診断のことで、ホームインスペクターと呼ばれる専門家が住宅の劣化状況や欠陥の有無を評価します。売却時のトラブルを避けることはもちろん、「プロの検査済みでトラブルが起こりにくい物件」としてほかの別件と差別化することで、早く、高く売れる可能性が高まります。
瑕疵保険に加入する
万が一、瑕疵トラブルが発生してしまった場合に備えて、「個人間売買用の住宅売買瑕疵保険」に加入しておくのも一つの手。ただし、加入に際して、住宅が一定の基準を満たしている必要があり、検査費用や保険料などコストがかかる点に注意が必要です。また、不動産会社で独自に補償サービスを提供している場合もあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
トラブルを避けるためにもしっかりとリスクマネジメントを!
売却する住宅の不具合を隠していると、後に大きなトラブルに発展する恐れがあります。そういった事態を避けるためにも、不具合の申告はもちろん事前に修繕をしておくなど、真摯な対応をすることが大切です。また、必要に応じてインスペクションや瑕疵保険を活用して、リスクマネジメントを考えながら、不動産売却活動を行いましょう。