親が不動産を遺してくれた場合、「現金に換えてから相続したほうが良いのでは?」と悩む方もいるでしょう。現金には「不動産より扱いやすい」というメリットがあるため、相続するなら「現金派」と思っている方も少なくありません。とはいえ、すぐ現金化することが危険なケースもあります。不動産で相続する場合のメリットや注意点を把握して、ベストな選択肢を見つけましょう。
相続するなら「不動産」がお得
親が不動産を遺してくれた場合、分配のしやすさなどから現金化を検討する方は少なくありません。一方、不動産で相続したほうがお得なケースがあるのも事実です。
たとえば、相続税に関しては現金ではなく不動産を相続したほうが安くなります。これは、現金相続時にかかる税率と不動産相続時に課せられる税率には大きな差があるからです。そのため、「不動産を相続」→「その後現金化する」というステップを踏んだほうが、現金を相続するより多くのお金を得ることができます。
不動産相続、どのくらい「お得」なの?
先ほど、不動産を相続するほうが税率面で「現金よりお得」になるとお伝えしました。では、実際にはどのくらい変わるのでしょうか?
たとえば3,000万円の現金を相続した場合、相続税を計算する際に財産価値の基準となる「相続税評価額」は「額面通り」となるため、3,000万円にまるごと相続税がかかります。一方、不動産を相続した場合は事情が変わってきます。不動産の相続税評価額は時価の70%程度で計算されることが一般的なので、3,000万円相当の不動産を相続した場合は2,100万円ほどになります。
このように、不動産を相続したほうが現金よりも相続税評価額が低くなります。不動産相続後現金化したほうが、手元に残るお金も多くなるでしょう。
現金3,000万円を相続 | 3,000万円相当の不動産を相続 | |
相続税評価額 | 3,000万円 | 2,100万円程度 |
特徴 | 相続税評価額は「額面通り」となる | 相続税評価額は時価の70%程度 |
現金相続は親族間トラブルにつながるリスクも
ここまで不動産で相続するメリットについてお伝えしてきました。ですが、現金相続にもメリットはあります。遺産相続の際は話し合いを経て「相続する割合」を決めますが、現金なら相続人全員に均等に配分できます。不動産を相続する場合に比べ、「話し合いが進みやすい」点は大きなメリットと言えるでしょう。
また、現金は不動産とは異なり「管理」の手間がかかりません。相続人になると固定資産税や管理費、維持費を把握したり、ときどき家の掃除をしたりと、面倒なことが多いのも事実です。
ただ、こうした現金相続のメリット、不動産相続のデメリットを鑑みても「相続税の高さ」は看過できない問題と言えるでしょう。前述のように現金は不動産に比べ税率が高いので、手元に残る金額は少なくなるのが一般的です。
また、現金相続は意外とトラブルも多くなります。「均等に分配できる」というメリットはあるものの、少しの金額差で相続人から不満が出てトラブルになってしまうケースも少なくありません。現金を相続した結果「親戚同士の関係が悪化してしまった」という事態も考えられるので、こうしたリスクを踏まえることも重要でしょう。
不動産相続時は「話し合い」をしっかりと
「お得」になることの多い不動産相続ですが、複数人で相続した場合は若干の注意が必要になります。というのも不動産は相続人全員が同意しないと売却ができないからです。相続人のうち、一人でも「売却しない」と主張すれば現金化はできません。そのため、「不動産を相続する」と決めたら全相続人が納得できるよう、相続する不動産の今後の方針についてしっかりと話し合うことが重要です。
相続独自のルールを知って、より「お得」な選択を!
相続では少なくない税金がかかります。少しでも手元に残るお金を増やしたいなら、「お得になる方法」を把握しておきましょう。不動産に関して言えば、現金化せずに相続したほうが相続税評価額が低くなることは前述のとおりです。相続のルールを知り、親が残してくれた財産を有効活用できるようにしましょう。