管理の大変さや固定資産税などの税金の問題から、賃貸物件の売却を検討するケースは珍しくありません。しかし、入居者がいる場合、または立ち退き交渉が頓挫してしまった場合などは、どのように売却を進めたらよいのでしょうか。本記事では、入居者がいる状態の賃貸物件の売却のコツやノウハウを詳しくお伝えします。
賃貸物件の売却に立ち退きは必須ではない
賃貸物件を売却する際、「入居者すべてを退去させなければいけない」と考えている方も少なくないはず。しかし、賃貸物件は投資用物件とみなされ、居住用物件より低い価格で所有権のみを売買するのが一般的。そのため、入居者がいる状態でも賃貸物件の売却は可能です! 物件所有者は入居者の家賃が収入となるため、満室に近ければ近いほど、高値で売買されます。
ちなみに、入居者がいる状態で所有権のみを売買する取引形態を「オーナーチェンジ」と呼びます。オーナーの交代は、入居者には事後報告されることがほとんどです。ただし、管理会社が家賃の回収を代行しているケースや、家賃保証で管理会社による借り上げ契約となっているケースでは、入居者に対してオーナー変更の通知をしない場合もあります。
売主にとっては、入居者全員に対して立ち退き交渉を行わずに済むのが大きなメリット。買主は家賃を受け取る権利と共に、売主が借主に対して負っていた敷金の返還義務や建物の修繕の責任なども引き継ぎます。
立ち退き交渉してから売却をした方が有利になるケースも
将来的に家賃収入が見込めない賃貸物件を1棟まるごと売却するケースでは、入居者を立ち退かせた方が高値での取引が期待できます。
また、3LDKや4LDKなどファミリータイプの物件は、専有面積と賃料が必ずしも比例しません。そのため、1人暮らし用のワンルームに比べて投資用不動産としての利回りは低くなりやすく売却が難しいという声も。
上記のような物件を売却する場合は、立ち退き交渉を視野に入れて売却を検討するのがおすすめです。
立ち退き交渉のポイント!
交渉開始は1年~半年前までに
入居者が立ち退きを告げられても、ある程度期間に余裕がなければ引っ越しの準備を整えられません。また、立ち退き交渉自体も完了までに時間がかかるため、遅くとも売却の半年前以上からはじめるのがオススメです。
立ち退き料の目安は?
立ち退き料の相場は明確には決まっていませんが、家賃半年~1年分程度が目安とされています。しかし、入居者との交渉次第では、さらに高額な立ち退き料を求められることも。早期立ち退きを求める場合は、さらに上乗せしなければならないため、予算は十分に確保しておきましょう。
引っ越しに必要な情報をそろえておくと交渉が有利に進むことも
近隣のめぼしい物件や、引っ越し会社のプランなど、入居者の退去に関わる情報を事前に所有者側でリサーチしておきましょう。入居者側の経済的負担や心理的負担を減らすよう心がけることで、立ち退き交渉がスムーズになります。
立ち退き料の支払いに期限を設けておく
売却日間近に入居者側が一斉に引っ越しすると、所有者側はさまざまな手続きをあわただしく行わなくてはなりません。不動産売買は大きな金額が動くため、売主・買主ともに心に余裕をもって行いたいもの。
「余裕をもって立ち退きの期限を設定し、その期限までに立ち退いた入居者のみに立ち退き料を支払う」という内容で合意しておくと、所有者側の手続きが煩雑になるのを防げます。
退去は必須ではないけれど、必要に応じて交渉を!
賃貸物件を売却する際、所有権の売買のみを行う「オーナーチェンジ」をすれば、入居者の立ち退きは必要ありません。しかし、中には入居者を全員退去させた方が高値で売却できる物件も。所有している物件ではどちらのケースが良いのかを見極めて、立ち退き交渉をする場合は早めに誠意をもって行いましょう!